今年は、ファッションの二極化がより進んだ年だった。高級ブランドはより高級化する中で、売り上げ低下傾向への歯止めとして、安めの製品を出す傾向も目立ち始めた。一方、量販店系や通信販売の服もデザイン性を重視したものが増えてきた。全体として大きなトレンドは出現せず、ブランド側からの押し付け型の提案が減ったのも、今年の特徴だった。
◇安価ラインも
春のドルチェ&ガッバーナ(銀座)やラルフ・ローレン(表参道)、次いでカルティエ(南青山)、また11月にはグッチ(銀座)など、今年も欧米ビッグブランドの大型旗艦店の出店が相次いだ。
高級ブランドはより本物志向が強まり、豪華な素材やこった職人技を駆使した高価な製品が増えた。欧米や日本では格差社会がより強まり、また中国やロシア、インドなどで増えたニューリッチ層などの需要に応えるものだった。
ブランド全体での売り上げ逓減が続く中で、ブランド同士の競争が激化。旗艦店ラッシュは世界の最重要市場として、またアジアへの拠点としての東京での闘いへの決意を改めて示すものとされている。
売り上げを伸ばすためには高級化だけでは足りない。中国や東欧などに生産を移した安い価格帯のラインを打ち出すブランドも増え、同じブランド内での製品二極化も進んだ。
国内アパレルや中堅ブランドの不振が続く中で、永澤陽一を起用したイオン、伊勢丹のカリスマバイヤーだった藤巻幸夫がかかわったイトーヨーカ堂などの量販店系が活躍。またデザイン性やサービスを充実させてきた通販系の服が売り上げを伸ばした。
◇携帯で即注文
また一方で、渋谷109系などの若い女性向けの安価な「リアルクローズ」も好調だった。こうした服を集め、携帯サイトでその場で注文できるショーを開いた東京ガールズコレクションも盛況を示した。
今年はコレクションでも東京のストリートファッションでも、ビッグトレンドは特にはなかった。その代わりに目立ったのは、各ブランドが着る側のコーディネートを前提としたようなシンプルな服を出してきたことだった。
◇「2.0」時代に?
ネットの世界ではいま、「Web2.0」時代といわれるような、情報の送り手と受け手の双方向性が急速に高まる現象が広がっている。ファッションは長らく、作り手が神託のようにトレンドをシーズンごとに消費者に押し付ける時代が続いてきた。
今年のトレンドの出方の新たな傾向は、この世界でもいわば「Fashion2.0」とでもいうべき時代が始まってきたことを示しているのかもしれない。